2025.08.24
「ブランドの価値をどう高めればいいのか分からない」「競合と何が違うのか伝えきれていない」といった悩みを抱える方は少なくありません。ブランドの力を可視化し、強化していくための考え方として注目されているのが「ブランドエクイティピラミッド」です。
この記事では、ブランドエクイティの基本やピラミッドを構成する6つの要素について、活用事例を紹介します。ブランド力を高めたい企業担当者・経営者の方は、参考にしてください。
ブランドエクイティピラミッドとは、顧客がブランドを「知る」段階から「信頼し、愛着を持ち、選び続ける」段階に至るまでの心理プロセスを段階的に整理したフレームのことです。
理性的な要素(認知や性能など)と、感情的な要素(共感や愛着など)の両面から構成されており、消費者の心の中にブランドがどのように積み上がっていくかを可視化するものです。
そもそも、ブランドエクイティとはブランドが持つ「資産価値」のことを指します。単なるロゴや名前にとどまらず、消費者との関係性や信頼、期待、愛着といった目に見えない価値の総体を意味します。
ブランドエクイティピラミッドは、こうしたブランドの目に見えない価値を段階的に形成していくための思考モデルとして、多くの企業で活用されています。
ブランドエクイティが注目される理由として、以下の3点を挙げることができます。
ブランドエクイティが高まると、顧客ロイヤリティも自然と向上します。顧客ロイヤリティとは、ブランドに対する信頼や愛着の度合いのことで、信頼や愛着が強いほどブランドの商品やサービスを繰り返し購入し続けてくれる傾向があります。
ブランドエクイティを可視化し、経年変化を追いながら支援施策を実施することで、ブランドへの信頼や愛着を戦略的に深めていくことが可能です。こうした取り組みは、単なるマーケティング戦略や営業支援にとどまらず、経営判断にも資する重要な指標となります。
ブランドエクイティが注目される理由の一つが「競合との差別化が進む」ことです。市場に同質化した商品やサービスがあふれる中で、他社との違いを明確に打ち出せるかどうかは、ブランド戦略における大きな課題となっています。
ブランドエクイティが高いと、消費者はそのブランドに独自の価値を見出しやすくなります。たとえ価格や性能に大きな違いがなかったとしても「あの商品なら信頼できる」「あのブランドだからこそ買いたい」といった感情的な理由が購入の決め手になることもあります。
結果として、ブランドエクイティは価格競争からの脱却やプレミア価格の提示といった競争優位性の獲得に直結します。差別化の実現は、長期的に見てブランドの成長と収益性の向上にも貢献する重要な要素です。
ブランドエクイティが重要視される3つ目の理由は「経営の安定につながる」ことです。
ブランドエクイティは顧客ロイヤリティを高める効果があります。ロイヤリティが高まると、次のような好循環が生まれます。
上記のように、ブランドエクイティは短期ではなく中長期的に作用するため、経営の安定につながるのです。経営の安定を求める投資家・経営者にとっては魅力的な指標と言えるでしょう。
ブランドの価値は、顧客の心にどれだけ深く刻まれているかで決まります。選ばれるブランドになるためには、どのような段階を踏んで信頼や愛着を築いていくかを理解することが欠かせません。
ここでは、ブランドを「思い出される存在」から「愛される存在」へと成長させるために必要な、ブランドエクイティピラミッドの6つの構成要素について解説します。
ブランドセイリエンスとは「○○といえばあのブランド」と、すぐに思い浮かべてもらえるかどうかを示す指標のことです。これは、ブランドが顧客の心の中にどれだけ深く根付いているか、つまり「思い出しやすさ」や「存在感」の強さを意味します。
特に、購買頻度の高い商品カテゴリーでは消費者が商品を必要とした瞬間に真っ先に思い出してもらえることが、選ばれるための重要な要素となります。競合他社と比較された際に、自然と選ばれる存在であるためには、このセイリエンスの強化が欠かせません。
ブランドパフォーマンスとは、ブランドが提供する商品やサービスが、どの程度「機能的ニーズ」を満たしているかを示す指標のことです。ただ機能が多い・スペックが高いというだけでなく、顧客が本当に求めている実用的な価値を的確に提供できているかが問われます。
ブランドエクイティピラミッドの中では、機能的な要素であり、下記などが評価対象になります。
この段階がしっかりしていることで、ブランドへの信頼が生まれ、顧客が継続して商品を購入する土台となります。
ブランドイメージは、消費者がブランドに対して抱く印象や感情を指します。商品やサービスの品質が優れていても、そのイメージが消費者に正しく伝わっていなければ、ブランドとしての価値は十分に発揮されません。
消費者がブランドに対してどのような印象を持っているか、それが企業側の意図と合致しているかを常に把握することが重要です。また、無理に好印象を作ろうとして強引なストーリーや過去の功績を過度に打ち出すと、かえって逆効果になりブランドに対する信頼を損ねるおそれもあります。
ブランドイメージは一度定着すると簡単には変わらないため、企業は一貫したコミュニケーションによって、時間をかけて丁寧に育てていく必要があります。
ブランド・ジャッジメントとは、消費者がブランドの提供する商品やサービスに対して、理性的にどのような評価を下しているかを表す指標のことです。品質、信頼性、価格の妥当性、革新性など、複数の視点から判断されます。
この評価が高まることで、次の段階である「ブランドから連想する感情(ブランド・フィーリング)」へとスムーズにつながっていきます。
ここで重要なのは、評価が「他社製品と比較されたうえでのもの」であるという点です。つまり「そのブランドは、同じカテゴリの中で優れている」と思われているかがカギになります。
競合の中でも正当に選ばれるためには、商品・サービスの実力に対して明確な価値を伝えることが求められます。
ブランド・フィーリングは、ブランドに対して消費者が抱く感情的な評価を示す指標です。安心感、信頼感、楽しさ、誇らしさ、愛着など、ブランドがどれだけポジティブな感情を喚起できているかが問われます。
ブランド・イメージが印象や認知に近いのに対し、ブランド・フィーリングはより深いレベルでの感情的な結びつきに注目します。
こうした感情が強く育っていくと「そのブランドを誰かに紹介したい」「また買いたい」という行動意欲にもつながっていきます。ただし、ここまで強い感情的価値を感じてもらうには、高いブランド成熟度が求められるため、簡単なことではありません。
ブランドレゾナンスは、ブランドエクイティピラミッドの最上位に位置する段階であり、ブランドと消費者の間に強い心理的な絆が築かれている状態を指します。
要するに、ブランドに対して愛着や忠誠心が芽生え、消費者の中で「このブランドでなければならない」という感情が定着している状態です。
例えば「このブランドは自分の価値観やライフスタイルに合っている」「家族や友人に自信を持って薦めたい」といった感情が芽生えている場合、ブランドレゾナンスは高いといえます。
この段階に到達することで、顧客のリピート率が高まり、価格に左右されにくい安定的な支持が得られるようになります。ブランドが長期的に愛され、継続的に選ばれ続けるためには、ブランドレゾナンスの形成が極めて重要な鍵となります。
ここまでブランドエクイティピラミッドの基本情報や構成要素についてお話してきました。
最後に人気コーヒーチェーン「スターバックス・コーヒー」におけるブランドエクイティピラミッド活用事例を紹介します。
スターバックス・コーヒーは、「コーヒーチェーン=スタバ」と真っ先に思い出されるブランドです。スターバックスは、必ずしも毎日利用されるとは限らないにもかかわらず、多くの人の頭にすぐ浮かぶ存在となっています。
これは、ブランドセイリエンス(思い出されやすさ・心の中の存在感)が非常に高いことを示しています。また、スターバックスは強力なブランドセイリエンスを維持するために、新しい経験や価値の提案を継続し、消費者の記憶に鮮度を保ち続けています。
日本上陸から20年以上が経過した今も、スターバックスは季節限定商品や地域限定メニューなどを通じて常に新鮮な印象を保っており「何か新しいことをしているブランド」という認識を与え続けています。こうした継続的な工夫は、ブランドセイリエンスの構築・維持に成功している好例といえるでしょう。
スターバックス・コーヒーは、商品やサービスの実力を表す「ブランドパフォーマンス」の観点で、品質・空間・体験の3つの要素において高い評価を得ています。
コーヒーの品質においては、スターバックスは世界中から調達したアラビカ種の豆を厳選し、自社で独自の焙煎基準を設けています。バリスタの技術力向上にも注力しており、社内プログラム「コーヒーマスター制度」などを通じて、従業員の知識や技能を高める体制が整っています。
参考:スターバックスコーヒー「豆からカップまで」
空間づくりでは、各店舗が地域の文化や環境に合わせたデザインを採用しており、全く同じ内装の店舗は存在しません。地域性を重視したアートや建材を取り入れることで、訪れる人々に親しみやすい印象を与えています。
体験価値としては「第三の場所(サードプレイス)」のコンセプトのもと、家庭や職場とは異なる心地よい時間と空間の提供を追求しています。限定商品や季節ごとの演出によって、来店ごとの小さな発見や期待感を生み出している点も、ブランドパフォーマンスの高さを支える要素といえるでしょう。
スターバックスは、SNSや店頭プロモーションを通じて、ブランドイメージとして「誠実さ」や「安心感」「心地よさ」を意識的に訴求しています。例えば、季節ごとに登場する期間限定のドリンクやグッズは、生活に彩りを添える体験として消費者に好意的に受け止められやすく、SNS上でも頻繁に共有されています。
また、こうした日々の発信や商品設計の工夫が「スターバックスらしさ」という一貫した世界観の構築に寄与しています。
ブランドエクイティピラミッドにおいては、上位要素である「ブランド・ジャッジメント」や「ブランド・フィーリング」を強化するために、まずこの「ブランドイメージ」の段階で好意的な印象の土台を築くことが重要です。
スターバックス・コーヒーのブランドイメージが強固である背景には、同社が提供する「おしゃれ」「洗練された」などといった感情的価値が影響しています。自身の価値観やライフスタイルに合致した商品を手に入れたという充足感を提供することに成功しており、過去に実施した調査では、スターバックスの商品を購入した後の消費者の約80%が「これからの生活が楽しみ」と回答しています。
「おしゃれ」「洗練された」といった感情はスターバックスの商品に付随価値として定着しているため、時と場合によっては「スターバックスに行くこと自体が目的になる」という事象が発生します。ブランド忠誠心の強いファンを獲得し、再購入率を高めていく上で、感情的価値の提供は非常に重要と言えます。
ブランドレゾナンスとは、ブランドと顧客との間に強い絆が築かれ、継続的な購買や他者への推奨、ブランドへの愛着行動が自然と生まれる状態のことです。これは、ブランドエクイティピラミッドの最上位に位置し、最も成熟したブランドと消費者の関係です。
スターバックスは「人々の生活に欠かせない存在でありたい」というブランドビジョンのもと、消費者が思い描く理想のライフスタイルとブランドを重ねる戦略を展開してきました。
例えば「スタバでMacBookを開いて仕事をする姿」などは、都会的で洗練された生活の象徴として広く共有され、憧れのシーンとして定着しています。
こうした「理想」や「憧れ」のイメージが、次第に「愛着」へと昇華され、スターバックスが生活に欠かせない存在だと多くの人に感じさせる状態を実現しています。
国内での店舗展開や季節限定商品の演出も、このブランドとの強いつながりを維持・深化させる要素となっており、ブランドレゾナンスの優れた事例といえるでしょう。
ブランドエクイティを上手く活用し、強化していけるかどうかが、これからの勝負になってくると思うので、ぜひこの機会にご自身のブランドと照らし合わせながら支援先や自社のブランド力を構造的に分析してみてください。
縁達磨では「縁起こしブランディング」で商売繁盛を支援しています。
縁起こしブランディングは、国内外のブランド支援で培われた戦略立案プロセスを、「心・敵・技・体・動」の5つの工程に整理した、縁達磨独自の手法です。
ブランドエクイティを向上させる上では非常に効果的な支援を提供できます。ご興味があれば、ぜひご相談ください。
ここまでブランドエクイティピラミッドの基本から、活用事例まで紹介をしてきましたが、いかがでしたでしょうか?「自社のブランドエクイティを高めていきたい!」と少しでも思っていただけていたら嬉しいです。
縁達磨では、企業のブランドが本来持つ価値を引き出せるよう、支援先に寄り添いながら伴走しています。
商売のお悩みはいつでもご相談ください。長い文章を最後までお読みいただきありがとうございました。
商売繁盛の縁を引き起こせるよう、一生懸命がんばります。
ご縁に感謝。
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