2025.08.24

ブランドブックとは?制作する際のポイントや成功事例を紹介

# Branding

ブランドの価値や理念を社内外に正しく伝えるには、言葉とビジュアルの一貫性が欠かせません。ブランドブックは、その基盤をつくる役割を担っており、インナーブランディングを推進するうえでも重要なツールです。

この記事では、ブランドブックの定義や必要性、制作時のポイントなどを解説します。また、実際の企業事例も紹介しながら、活用のヒントを具体的に紹介します。

ブランドブックとは?


ブランドブックとは、ブランドの価値や理念をデザインと文章で表現した資料のことです。近年では企業の「カルチャーブック」と呼ばれることもありますが、伝える内容は同様です。

カルチャーブックは、社内向けに作られることが多い傾向にあります。ブランドブックは、社内外問わず広く活用されることが多いものの、境界線は薄く、内容が被ることも多々あります。

ブランドブックはブランドの核となる部分(MVVやコンセプト)を指し、カルチャーブックはその核をもとに作られた派生物と位置付けています。

ブランドブックはなぜ必要?

ブランドブックは、ブランドの価値や理念を社内外に正しく伝えるために欠かせないものです。

しかし、ただ持っているだけでは意味がありません。「なぜそれが必要なのか?」と疑問に思う方もいるでしょう。

ここでは、ブランドブックを制作する上で重要な3つの目的をご紹介します。

一貫したブランド表現のため

ブランドブックは、一貫したブランド表現のために必要です。

ブランド表現とは、企業や商品の価値を伝えるために用意された「メッセージ」と「ビジュアル」の総称で、一般的には広告やPRなどのコミュニケーション活動のことです。

近年では、WebサイトやSNSをはじめとしたタッチポイントの増加に伴い、過去のように広告だけを指す言葉ではなくなってきています。

これらのブランド表現は「何を伝えるか?」といった内容面の戦略を意味する「コンテンツ戦略」と「どのように伝えるか?」といった形式面の戦略を意味する「コンテキスト戦略」に区分されます。

コンテンツ戦略は思想やメッセージといった、ブランドブックの中身の部分です。それに対して、コンテキスト戦略は表現やビジュアルといった、ブランドブックの外側の部分になります。

これらはレイヤーのように積み重なるものですが、ひとつでもズレが生じると全体が崩れてしまいます。

そのため、すべてのスライドや媒体において
「伝えるべきことをきちんと伝えているか?」という内容面と「伝え方の工夫が足りているか?」という形式面の両方に注意を払うことが大切です。

企業理念やビジョンを共有するため

ブランドブックには、企業理念(ミッション)や目指している理想的な将来像(ビジョン)を伝える役割があります。

一言で伝えられるような短い言葉で構造的に伝えることが求められるため、理念やビジョンのあり方がブランドブック全体の精度を高めつつ伝達効率を良くします。

伝え方の精度や伝達効率の良さによって、ブランドブックの価値は大きく変わります。

今後仕事を依頼したいと考えたとき、最初に思い浮かぶ企業になるには、想いを巧みに表現し、ブランドとしての一貫性を保つことが求められます。そのため、ブランドブックの制作段階で、理念やビジョンを強化していくことをお勧めしています。

また、本当に大切な価値観以外は排除するという思考法も大切です。

自社に共感する人材を採用するため

企業文化や価値観に共感する人材を引きつける「カルチャーマッチ採用」が注目されています。そのため、採用活動ではブレないブランド軸がより重要になっています。

その軸を可視化し、外部に伝えるツールの一つとして、「ブランドブック」が役立ちます。

ブランドブックを活用すれば、自社の価値観・文化・ミッションが明確に示されるため、自社とフィットする人材が集まりやすくなります。さらに、このような明確な文化可視化を通じて、採用の質の向上や社内エンゲージメントの強化が期待できます。

ブランドブックを構成する7つの要素


ブランドブックに必要なものは、企業のアイデンティティを失わないために必要なものを、言葉やビジュアルで表現するためのガイドラインです。

ここでは、ブランドブックを構成する7つの要素について紹介します。

MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)

MVVは、企業のブランドを支える基本要素であり、従業員にとっての羅針盤となる重要な指針です。企業の存在意義(ミッション)、目指す未来像(ビジョン)、共有すべき価値観(バリュー)を明文化することで、組織全体が同じ方向に進む土台を築きます。

  • ミッション(Mission)......企業が果たすべき役割や使命。なぜその企業が存在するのかを示します。
  • ビジョン(Vision)......企業が描く理想の将来像。どこに向かって進んでいくのかを明確にします。
  • バリュー(Value)......企業や従業員が大切にする価値観。日々の意思決定や行動の基準となります。


MVVの浸透は、企業文化の形成やブランド力の強化に直結するため、明確な言語化と社内への共有が不可欠です。

ブランドコンセプト

ブランドコンセプトは、ブランドの核となる考え方を言語化したものであり「顧客にどのような価値を提供するのか?」を端的に表す重要な要素です。社内外の関係者にブランドの方向性を正しく伝えるためには、簡潔かつ明確な表現が求められます。

その策定にあたっては、ターゲットや市場環境を十分に踏まえることが不可欠です。顧客にとっての具体的な価値を示しているか、競合ブランドと比較して独自性を持っているかどうかを、リサーチに基づいて検証する必要があります。

ブランドコンセプトが曖昧なままでは、社内外の認識にズレが生じ、ブランド戦略全体の一貫性が損なわれる恐れがあることに留意してください。

ブランドメッセージ

ブランドメッセージは、企業やブランドが伝えたい想いや信念を、象徴的かつ簡潔に表現するものです。キャッチコピーやスローガンといった形で使われることが多く、ブランドの「らしさ」や世界観をひと目で伝える役割を担います。

単なる事実を伝えるだけでは人の心に残りにくいため、ブランドが大切にしている価値観や、過去の挑戦・判断から生まれた信念などをメッセージに込めることで、共感や意味づけが生まれやすくなります。

「小さくて大きな嘘」のように、少しの誇張を交えながらもブランドの本質を鋭く突く表現が、人々の印象に強く残るケースもあります。

また、ブランドメッセージはマーケティング戦略やブランド戦略の立案、クリエイティブの発注をする時に、指針となるものです。そのため、ブランドブックの中で最も重要な要素と言っても過言ではありません。

行動指針

MVV、ブランドコンセプト、ブランドメッセージと、目的や意味合いが異なる要素が続きましたが、ここからはそれらを実現させていくために、チーム全員で守っていく必要がある「行動指針」を紹介します。

行動指針とは、直訳すると「ガイドライン」、守るべき「指針」となりますが、別に何か競技を行う際のルールを守る必要はありません。

ここでいう「行動指針」とは、単なるルールではなく、日々の意思決定や行動を後押しする“チーム全体の合言葉”のようなものです。例えば、面白法人カヤックの「面白そうだからやってみる」といった考え方のように、価値観や行動姿勢をシンプルな言葉で表したものをイメージしてください。

全社的に共通して持っているべき指針ですが、各職種・各ブランド担当者の指針に落とし込んでもらうことで、より一層強度が増します。

ロゴ・シンボル

ロゴやシンボルマークは、ブランドが持つためのものではなく、ブランドが伝えたいものを伝えるために使用するものです。ロゴやシンボルマークを通じて、企業理念やビジョン、そしてバリューがないと、自社のブランドブックを価値あるものにすることはできません。

ロゴやシンボルマークの変更は、他の要素とは比較にならない大きなインパクトをもたらします。

国際的スポーツ大会の名前が変更になり、そのロゴも変更された例を上げる必要はないと思いますが、実際にブランドとロゴは切り離せないぐらい強い関係性があることを理解しておいてください。

ブランドの歴史と未来

ブランドブックでは、ブランドの成り立ちやこれまでの歩み、そしてこれからの目指す姿を明確にします。過去を知ることでブランドに対する理解と愛着が深まり、未来を描くことで従業員や関係者が向かうべき方向が見えてきます。

例えば、創業当初に大切にしていた価値観や、企業としての転換点となった出来事などを振り返ることで「なぜ今のブランドがあるのか」が伝わります。

売上や受賞歴、商品数などの数字も示すことで、説得力を高められます。

一方、これからの未来では、ブランドとしてどのような理想を描き、どのように社会や顧客に貢献していくのかを示します。ブランドの存在意義(MVV)やブランドコンセプトを再度強調することで、今後も変わらず大切にしていく価値を伝える効果もあります。

ブランドガイドライン

ブランドガイドラインとは、ブランドの方向性や価値を社内外に一貫して伝えていくためのルールや行動規範のことです。ロゴの使用方法や言葉のトーン、写真やデザインのスタイルなど、ブランドを統一的に表現するための指針がまとめられています。

このガイドラインがあることで、社員一人ひとりがブランドを正しく理解したうえで行動できるようになり、企業活動全体の一貫性が保たれます。

また、社外のステークホルダーに対しても、統一されたブランドコミュニケーションが可能となり、ブランドの信頼性と浸透力を高めることにつながります。

ブランドブックを制作する際のポイント


ブランドブックを作ることは簡単ではありません。納得度の高いものにするためには、入念な準備と高いクリエイティブの力が必要になります。

ここでは、弊社がブランドブックを制作する際に意識している5つのポイントを紹介します。

誰もが理解できる言葉で伝える

ブランドブックは「企業の価値や理念を伝えるためのもの」と言われることがありますが、経営者やマーケターといった専門家でさえ、理解が難しいと感じるものが多いです。ましてや現場のスタッフや新しく入ってきた人にとって理解するのは難しいです。

そのため、デザイナーやクリエイターではなく、どんな職種の人が読んでも分かる言葉で、価値や理念を伝えていくことが重要です。また、国や文化が異なる中でビジョンを実現していくためには、普遍性のある価値の言語化も欠かせません。

照れくささや恥ずかしさを感じるかもしれませんが、私たちの使命や理想とする未来を、一番大切な人に伝えるときの言葉を借りてきて、価値や理念を伝えていきましょう。

複雑さを排除して本質を見せる

ブランドガイドラインといった定義書をはじめ、伝えたいメッセージが複数ある場合、全て詰め込もうとする傾向があります。しかし、メッセージはシンプルであるほど伝わりやすいです。

伝えたいことが複雑であればあるほど、メッセージは本質に立ち返る必要があります。伝えたいことが複雑であればあるほど、メッセージは本質に立ち返る必要があります。

UXデザインの領域では「ひとつの使命、ひとつのプロジェクト(one principle, one project)」という言葉があります。UXデザイナーは、関わるプロジェクトにおいて「使命」に関する定義がなされていてかつ、それが遵守されていることを「第一優先事項」としているそうです。

理由から納得させる構成にする

構造的に魅力的なストーリーは、簡単には忘れません。

「アップルは世界一のパソコンメーカーです。何故なら、世界中のクリエイターから必要とされるからです。そして、その理想の未来を提供するために、彼らは毎年数十億ドルものお金を投資しています。」といった具合です。

このように、まず結論を伝えた後に、理由や背景を詳しく伝えていく構成を意識してみてください。

共感と行動を引き出すきっかけをつくる

ブランドブックは、経営層から一般社員まで、企業の中で一番目に多くされる資料であり「行動指針」を中心に、日常的に繰り返し活用されることが理想です。

そのため、共感と行動を引き出すきっかけをつくる必要があります。

具体的には「行動指針」や「価値観」の章で、社員が共感したくなるような、ストーリーテリングを使った設計をしましょう。

継続的な理解促進の仕組みを設ける

ここまで、ブランドブックを制作する際のポイントを紹介してきましたが、制作時に最も伝えたいことは「理解促進は制作して終わりではない」ということです。

ブランド理解は一朝一夕ではできません。定期的なアップデートや、部署ごとに伝達内容をカスタマイズしたりと、継続的に理解を促進していく必要があります。

とはいえ、数千字にも上るMVVBやガイドラインを毎回読み返すのはとても非効率です。

そのため、数ヶ月に一度「以前よりブランド理解が進んでいるか」を確認する場を設けたり、価値観や行動指針といった重要な要素について再考してもらうなど、ブランドを思い出す「きっかけづくり」を行うことよいでしょう。

ブランドブックの成功事例


ここでは、ブランドブックの成功事例を紹介します。成功事例をもとに、制作する際のヒントを見つけてみてください。

株式会社長谷川商店

谷川商店様は、老舗の醸造業者として長い歴史を持ち、高品質な製品づくりを続けてきました。今回制作したブランドブックでは、長谷川商店を「醤油メーカー」として再定義し、その価値を社内外に正しく伝えることを目的としています。

制作の出発点となったのは、長谷川商店に代々伝わる「醤油一筋二百年」という言葉です。この言葉には、同社の歴史と未来への展望が込められており、「海外市場で最も選ばれる醤油ブランドであり続ける」というビジョンを支える軸として位置づけられました。

ブランドブック制作にあたっては、「それってつまりこういうこと」と誰にでも理解できるコンセプトを明確にすることから始まりました。クリエイティブディレクターを中心に、デザイナー、コピーライター、カメラマン、そしてお客様自身も含めてチームを構成し、同社のブランド価値を再定義していくプロセスを丁寧に進めました。

例えば「長谷川商店とは何か」「品質とは何か」「工程とは何か」「こだわりとは何か」「感動とは何か」といった問いを掘り下げ、それぞれの言葉に意味を与えていくことで、ブランドの本質に迫る内容に仕上げています。

さらに、ブランドブックに掲載する写真素材の撮影にも徹底的にこだわりました。商品の質感や色合いを正確に伝えることはもちろん、企業としての信頼感や創造性を表現するために、撮影ディレクションを重ねながら一枚一枚の写真に想いを込めています。

株式会社サンエイホーム

株式会社サンエイホームは、滋賀県を中心に住宅事業を展開する地域密着型の企業です。「思いをカタチにする。」というモットーのもと、住宅の新築にとどまらず、リフォームや土地探しなど、暮らし全体を支える幅広いサービスを提供しています。

ブランドブックでは、サンエイホームが大切にしてきた理念を「一生懸命、家づくり。」というブランドメッセージに込めています。さらに、「家づくりは、サンエイ!」というタグラインを軸に、ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)やブランドの原体験を丁寧に整理しています。

見た目の印象にも工夫を凝らし、一般的な住宅パンフレットでよく見られる写真をあえて使用せず、イラスト調のデザインをベースに構成しました。コンテンツの量を抑えることで、伝えたいメッセージを明確に浮かび上がらせています。

また、単調にならないよう配色やアイコンのデザインにもこだわり、全体に統一感のあるビジュアルを実現しています。

吉田金属工業株式会社

吉田金属工業株式会社は、1947年に新潟県燕市で創業された老舗の金属製品メーカーです。創業以来、シェフナイフなどのキッチンウェアを中心に製品を展開し、現在ではオールステンレス一体構造包丁「GLOBAL」が世界中の料理人から高く評価されています。

ブランドブックは、これまでの商品カタログとは異なり、GLOBALブランドの価値をより深く伝えることを目的としています。

従来のパンフレットでは機能訴求が中心でしたが、このブランドブックではブランドの世界観や背景、製品の歴史をストーリーとして再構築しました。その結果、読者の興味を引き、次のアクションへとつなげる導線を意識した構成となっています。

ブランドイメージの可視化を徹底し、表紙には洗練されたデザインが採用されています。中面には包丁の魅力を大胆に伝えるための横長フォーマットを採用し、さらに「片観音折り加工」によって原寸大のビジュアル表現も可能です。観音折りの手法は、片側のページがさらに開くようになっており、視覚的なインパクトを与える工夫が施されています。

また、用紙選びにもこだわり、包丁の硬質感と写真の美しさを際立たせるために、発色の良いグロス系の「ハイ・アピスNEO」が採用されています。紙厚は菊判90kg相当とし、全体のページ数や折り加工とのバランスを取っています。

縁達磨では縁起こしブランディングで商売繁盛を支援


縁達磨では、理念やブランド価値といった抽象的な概念を「具体的な行動」に落とし込み、属人化させない仕組みづくりを得意としています。これまで多様な業界・業種のブランド構築に携わっており、ブランドブックの制作実績も豊富です。

過去には、ラグビー日本代表のプロジェクトに参画し、ブランドブックの制作を通じて、チームや組織に根付く行動指針の策定や浸透を支援しました。代表選手たちの内発的動機に基づく「スタンダード=基準」を整理し、チームカルチャーを言語化しています。

その内容をビジュアルとコピーで表現したブランドブックとしてまとめることで、メンバー全員が「どうあるべきか」を日々の判断軸として持てるよう設計されています。こうした事例からも、縁達磨は単なるデザイン制作にとどまらず、ブランドの本質的な価値を可視化し、組織内で共通認識として機能させる仕組みづくりに強みを持っています。

商売のお悩みはいつでもご相談ください

縁達磨では、ブランド戦略の立案からブランドガイドライン、各種クリエイティブ制作までワンストップで提供しています。

だからこそ「ブランドブックはもっとこうした方が良い」や「ブランドロゴはもっとこうした方が良い」といった制作の途中で見つかった課題に対して、柔軟に対応することが可能です。

商売を取り巻く環境が目まぐるしく変化していく中で、ブランドの価値を正しく伝えていくことはとても難しくなっています。お悩みを抱えている企業担当者の方は、ぜひ一度弊社までご相談ください。

商売繁盛の縁を引き起こせるよう、一生懸命がんばります。

ご縁に感謝。

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