2024.06.05

ラグビー日本代表コンセプト「超速ラグビー」の裏側

# Business Development# Branding

ラグビー日本代表のヘッドコーチに8年ぶりに復帰した名将エディー・ジョーンズが掲げた新コンセプト「超速ラグビー」。
この記事では「超速ラグビー」のコンセプト開発を支援した商売繁盛支援会社「縁達磨(えんだるま)」代表ショーンがコンセプト立案の裏側を解説します。

エディー・ジョーンズ氏が掲げた「超速ラグビー」

超速ラグビーとは?

2023年12月13日ラグビー日本代表監督にエディー・ジョーンズ氏が8年ぶりに復帰。
監督就任記者会見では、ラグビー日本代表の新コンセプトとして「超速ラグビー」を掲げ、2027年のW杯に向けた活動が始まりました。

縁達磨への依頼のきっかけ

日本代表次期ヘッドコーチの選考プロセスを控えていたエディーさんは、頭の中にあるビジョンやチーム強化方針をわかりやすく、かつ魅力的に伝える必要がありました。
「スポーツ好きで、英語ができて、戦略を描ける」という条件に僕が該当していたということで、知人からエディーさんをご紹介頂いたのがキッカケです。

「超速ラグビー」ができあがるまで。具体的なコンセプト設計とは?

日本代表の勝率は7%

2015年W杯で南アフリカから大金星をあげ、2019年W杯では初のベスト8入り。
2023年は惜しくも予選敗退となってしまいましたが、ラグビー日本代表は素晴らしい活躍を続けてきました。

しかし、エディーさんはそんな日本大丈に大きな危機感を抱いていました。

それは、対戦相手をTOP10の国に絞ると、直近8年間の勝率が7%だということです。
エディーさんは2027年W杯でベスト4入りを掲げていて、勝率を75%まで高める必要があると考えていました。

そこで、エディーさんが掲げた、2つの強化ポイント。

ポイント①:「チームのアイデンティティー」を作ること。

海外勢と比べて体格で劣る日本が勝ち続けるには、日本にしかできない戦い方を確立し、ラグビー日本代表のアイデンティティーとして定着させる必要があります。

”We need to contain power with speed.”(速さで力を無力化する)
エディーさんがポイントとして挙げたのが「スピード」でした。
これまでも日本代表は速さを重視したプレースタイルでしたが、動きの速さだけでなく、プレー中の思考の速さと判断力の速さを磨くことに重点を置き、それらを強化するためのトレーニングのイメージを持っていました。

ポイント②:「ラグビーエコシステム」を作ること。

日本代表を強化していく上で、若手の育成が大事になります。
高校生や大学生年代を巻き込んで一貫性を持った強化を行うためにも、各世代が強固に繋がっているラグビーのエコシステムを作る必要性を強く訴えていました。

チームを勝利に導くコンセプト。  

「速さで力を無力化する」と「エコシステムを作る」方針をより具体的にするために、4つの要素とそれぞれの要素に付随する3つのアクションを言語化し整理しました。
そこからさらにわかりやすく伝えていくためにも、「コンセプト」の開発に着手しました。



コンセプトの語源は、ラテン語のcon(一緒に、ともに)+capera(捉える)と言われていて、物事の真ん中にあるものを「捉える」と解釈できます。
つまり、コンセプトとは根っこにあるものを捉えることで全ての指針となる役割を果たします。

しかし、いきなり実態のない概念を捉えるのは難しいので、「コンセプトの型」を使って見える化し、捉えやすくします。

コンセプトの整理方法については名書「コンセプトの教科書」内でも紹介されている「コンセプトの3点整理法」と「インサイト型ストーリー」という型を使って解説します。

ラグビー日本代表のコンセプトの3点整理法

まずは「コンセプトの3点整理法」を使って、構造を整理します。



コンセプトの3点整理法とは、画像のように、

対象の(生活者/顧客)と、
達成すべき(目的)を明確にし、
その目的を達成するためにどのような(役割)を担うべきなのか?

と明確にするために使います。

ラグビー日本代表の場合だと、

顧客:ラグビー日本代表選手 が
目的:強豪国に勝ち2027年W杯でベスト4に入る ために
役割:新たなチームアイデンティティー の役割を担う

と整理ができます。
では「新たなチームのアイデンティティー」とは具体的に何なのか?
これを見つけるために「インサイト型ストーリー」を使って骨子に肉付けをしていきます。

インサイド型ストーリー骨子でラグビー日本代表のコンセプトをより具体的に



「インサイト型ストーリー骨子」とは画像のように4つの着眼点でより具体的にコンセプトを明確化させる手法です。

1.インサイト
「〇〇な理想を持っている生活者がいます」
ここでは顧客が抱える満たされていない欲求や、未解決な不満を明記します。

2.競合
「しかし、△△な競合によって理想が満たされていません。」
戦うべき市場の中で現状の競合に対する不満や課題意識を明文化します。

3.自社の強み・ベネフィット
「そこで、自分たちにしかない力を使って生活者の〇〇を満たすことを目指します」
顧客の満たされない欲求に対する自社だけがもつ便益を明記します

4.コンセプト
「つまり、◻︎◻︎という解決策を示す」
最終的には簡潔な言葉でコンセプトを示します

これを軸に、ラグビー日本代表に書き換えてみます。

  1. 2027年ラグビーW杯でベスト4を目指しているラグビー日本代表がいます。
  2. しかし、体格で劣っている日本代表は、パワーゲームを仕掛けてくる強豪国に苦戦を強いられていて、ここ8年のTOP 10との対戦成績は勝率は7%という現実によって理想が満たされていません
  3. そこで、世界の力を無力化するために、動作の速さだけでなく、考える速さと決断する速さを極限にまで磨くことを目指します
  4. つまり、飛び抜けた速さを軸にしたプレースタイルという解決策を示します


「新たなチームアイデンティティー = 飛び抜けた速さを軸にしたプレースタイル」と定義したことで何を目指すチームなのかわかりやすくなりました。
しかし、19文字はコンセプトとして長すぎるため、言葉としては定着しません。
報道番組などでよく目にするニュースの見出しは約13文字、Yahoo!ニューストピックスの見出しは15.5文字なので、その半分の「7文字」を一つの基準に言葉の開発を進めました。

「速さ」を感じさせながらも短くシャープな言葉にする必要があったため「速」がつく言葉を書き出しました。
俊速(俊足)、神速、秒速、高速、光速、音速、電速(電光石火)、超速などが候補として残りました。

「音速、光速、電速」は最も速さを感じる言葉ではある一方で、人間が音や光の速さで動くことができないため、響きがいいだけの実体が伴わない言葉として形骸化することを懸念し候補から除外。
同様の考えで、言葉としてあまり馴染みのない「神速」も候補から外しました。

「俊速、高速」は、動きの速さに限定したイメージがあり、今回のポイントである思考や決断力の速さを捉えきれていないと考え選択肢から外しました。

残るは「秒速と超速」です。

「秒速」は確かに動き、思考、決断力の文脈で整合性が取れるので有力候補ではありましたが、「超速」という言葉と比較した時に、TVCMやポスターなど、今後制作が予想されるクリエイティブとの相性が悪いと考え、最終的に「超速」という言葉を残し「超速ラグビー」というコンセプトに辿り着きました。

つまり、「超速ラグビー」は「ラグビー日本代表が2027年W杯ベスト4の目標を達成するために、動き・思考・決断力の速さを磨くことで強豪国の力を無力化する。」という戦略を象徴する「勝つためのコンセプト」としてご提案しました。



エディーさんも「超速ラグビー」を気に入ってくださり、その場で即決。
日本代表のコンセプトとして掲げてくださいました。

エディーさんが監督就任以降、メディアやSNSでは「超速ラグビー」という言葉が多く使われており、少しずつ浸透していることを実感しています。

コンセプトを具現化!縁達磨の制作物

超速の陣|The Chosoku Revolution 

「超速ラグビー」をただの言葉で終わらせるのではなく、日本代表のアイデンティティーとして定着させるために「超速の陣|The Chosoku Revolution」と呼ばれる日本代表候補選手と関係者のみに配布される和本の制作も行いました。



「超速の陣」には、エディーさんからの約束の言葉、日本代表の大義、超速ラグビーの狙いなどが書かれています。
また、メモが取れるような仕様になっているため、選手や関係者が常に「超速ラグビー」が大事にしていることを振り返れるようにしています。

ラグビーの少年少女の間でも広がる「超速ラグビー」

エディーさんが監督に再就任されてから約半年が経ちました。
今でも彼と会うたびに「超速ラグビーまた褒めてくれたよ!」と嬉しそうにご報告してくださいます。

日本代表候補選手たちだけでなく、ラグビーをプレーする少年少女たちの間でも「超速ラグビー」が定着しているようで、エディーさんのラグビー界のエコシステム作りにもコンセプトが活きていると考えています。

超速ラグビー初お披露目は6月22日のイングランド戦

日本代表は2024年6月22日(土)に強敵イングランド代表との試合を控えていて、その試合で「超速ラグビー」のお披露目を控えています。
「速さ」で世界とどう戦っていくのか。今から試合がとても待ち遠しいです。


縁達磨について

繁盛処 縁達磨は「商売繁盛の縁を引き起こす」を使命に掲げた、鎌倉に拠点をおく商売繁盛支援会社です。
企画力を強みに、ブランディング、販売促進、商品開発の3つの支援領域を通して千客万来を実現し、お客様の商売繁盛に貢献します。

ぜひお気軽にお問い合わせください。

お問い合わせはこちら : お気軽にお問い合わせください。Contact us : Please feel free to reach out if you have any questions.

お問い合わせはこちら : お気軽にお問い合わせください。Contact us : Please feel free to reach out if you have any questions.

Drop us a line.